六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

丘の家のジェーン


中学生の頃からお気に入りで何度も読んだ村岡花子訳と,最近になって出版された新訳の木村由利子訳を読み比べてみた。確かに少々疑問だった言葉の幾つかは解決したり分かりやすくなったりしていた。村岡訳では中国名で「大角星」と記されていたうしかい座は,木村訳では「牛飼い座」になっていたし(学術用語では星座名に漢字は使わないので私個人としては違和感だが文学だからこれでいいのだろう),女の子のあだ名として疑問だった「こけらいた」は「オカッパ」と訳されていた。だが,私は全体的に村岡訳の方が格調高い気がして好きだったし,違和感なく読める気がした。ことにお祖母様の言葉遣いが木村訳はあんまりくだけすぎていて家柄の良い年長者としての威厳に欠けると感じた。ただ,物語を締めくくるアンドルー・スチュワートの言葉は,圧倒的に木村訳がしっくりきた。木村由利子氏は相当な思い入れを持って本書を訳されたようだ。
細かく見ると文節がかかる言葉が二つの訳で違っていたりして,プロの翻訳家でもこうして意見が違うほど言葉というものは難しいのだ,私などがかかる言葉が判定できずに困るのは当然なのだとちょっと安心(安心している場合でもないが)。

丘の家のジェーン (角川文庫)

丘の家のジェーン (角川文庫)

丘の家のジェーン (新潮文庫)

丘の家のジェーン (新潮文庫)