誕生日配達人 プーシカおばあさん
- 中谷真理子 作
- 有賀千砂 画
- 耕人舎 平成26年12月17日初版
自費出版の童話。縁があって,ある日思いがけず著者から送られてきた。
プーシカおばあさんは小さな溌剌としたおばあさんの姿をしていて,妖精なのか魔女なのかわからない。空を飛んだり海を泳いだりしながら世界中を駆け巡って誕生日の配達をし続けている。誕生日なのに忘れていたり祝ってくれる相手がいない,人はもちろん鳥や魚や虫や動物や花などを訪れて,心から「おめでとう」を言って,その人が一番欲しがっているものをプレゼントする。「生まれてきて良かったね」という気持ちを込めて。
でもそれはとても難しい。「生まれてきて良かった」なんて思えない。生きていることなんてどうでもいいとしか思えなくなった人の心に,心からの「おめでとう」を伝えるのはとても難しい。でもプーシカおばあさんは一人一人の心に寄り添ってどうにか一番のプレゼントをしてあげたいと頑張ってみる。
プレゼントを受け取ったのは,富士山の麓のY市に住む猫のコースケ(2歳),ドイツの数学の天才マルテンさん(60歳),スウェーデンT市に住むオスカルくん(11歳),ロンドンの公園に座り込むミュリエルさん(55歳),フランスのロワール地方Y市のフィリップ(?),カリフォルニア州M市のジョージ(21歳),東北地方T市の朋子(8歳),イタリアの散髪屋ルッペさん(80歳),日本海をのぞむ丘の上の老人ホームの初恵さん(85歳)。
幼い者にも年老いた者にも各々の苦しみや悲しみ,諦めや絶望がある。プーシカおばあさんは無理強いはしない。何でも知っているわけでもないし,何でも思い通りにできるわけでもない。でも配達される一人一人の幸せを願ってプレゼントをさがして贈る。
とても素敵な本だった。どの物語も決まって泣きそうになるので病院の待合室なんかで読むのは無理だった。挿し絵が物語にすごく似合っていて,この本そのものをプーシカおばあさんが贈ってくれたような気持ちになった。生涯大切にしたい1冊だと思う。この本との出会いと縁に感謝したい。