六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

ヨコハマ買い出し紀行 1〜6

 かなりお気に入りなコミック。『人類は衰退しました』とか『新世界より』なんかもそうなのだが,こういう人類が終わりに向かっている時代の物語が私はかなり好きらしい。

時代の黄昏が こんなにゆったり のんびりと来る ものだったなんて
私は多分 この黄昏の世を ずっと見ていくんだと思う
  ヨコハマ買い出し紀行(1) p.23

 海面が上昇し人類が緩やかな終わりを迎えようとしているいつかの時代の物語。主人公は海の近くで Cafe Alphaを営むロボットのアルファさん。 Cafe Alphaのお魚デザインの風見鶏(風見魚?)と背もたれに魚が描かれた椅子がかわいい。アルファさんはたまに横浜へ珈琲豆を買いに行くようだけど,その話は1回だけ。登場人物は至って少なく,ガソリンスタンドのおじさんと,おじさんの孫?のタカヒロ,町内会の人々,それにミサゴ。アルファサンのオーナーはどこかで彼女のことを気にしているけれど,なかなか帰ってこない。そんな世界で緩やかに穏やかに流れていく日常の中での人と人との関係。


先輩が よく俺に見せたのは そんな『旬のもの』の 風景だった
時代をよく表し 別に注目されず 2度と見られないもの
  ヨコハマ買い出し紀行(2) p.121

 アルファさんはA7M2型機。妹のようなココネさんは量産型A7M3型。彼女はムサシノの国へ帰っていく。ココネさんはお肉もお魚も食べられる。タカヒロはミサゴに会えるかな。アルファさんはカメラを持って大切な風景を残そうと300枚の想い出のためにスクーターで走りまわる。最後の大玉花火。先生とガソリンスタンドのおじさんの過去。そしてアルファさんと3人の続編。
 絵が本当にみんなとても素敵。何度も繰り返して見てしまった。


最近 少し気楽になる 方法を 見つけました
あまり 気楽になろうと しないことです
  ヨコハマ買い出し紀行(3) p.47

 お魚が好きなアルファさんのお部屋可愛い。月琴とココナちゃんとお魚が飛んで行く不思議な時間。ココナちゃんとムサシノ環8。風が出会う北の大崩とアヤセ、ゴワーっと飛んで行く降りられないターポン。生きている水神さまに昔の光の花。ミサゴの一日。
 終わっていく世界、時の流れからこぼれ落ちた時代をいっぱいに感じて生きていくアルファさんたち。


この海は こんなに 気持ちいいのに
もうもどらないものまで、ほしがるのは ぜいたくでしょうね
  ヨコハマ買い出し紀行(4) (アフタヌーンKC) 芦奈野ひとし [p.32]

 タカヒロの友だちのマッキ初登場。フナムシはイヤですよ>< タカヒロとココネさん初対面。アルファさんとココネさんの水着会。最後の砂浜。誰もいない砂浜。空の上のアルファさん。鶚に乗る若き日の子海石先生。どれだけ間があいても常連になれるカフェ・アルファ。アルファにちょっと敵対心を燃やすマッキ。


ムサシノの夜は 遠くから来る 山のにおいがします
  ヨコハマ買い出し紀行(5) (アフタヌーンKC) 芦奈野ひとし [p.56]

 アルファさんは珈琲豆の買いで久しぶりの横浜へ。そして思い立ってムサシノへ。その頃ココネさんはメッセージの配達で等々力へ。東急大井町線はここで線路が終わっている? ココネさんはメッセージの配達に思うところがあるようだ。ムサシノ,世田谷あたりは冬になると地平線までススキの海らしい。アルファさんの住む三浦半島とココネさんの住む世田谷。自然が浸食していくこの世界では空気の匂いも音の風景も違う。初めて外国へ来たアルファさんはそんなものを感じている。
 子海石先生に呼ばれた早朝の海で,アルファさんは先生の船を操縦する。先生が若い日に乗った鶚の姉妹なのだろうか? 今日生まれて同時にお別れする船。アルファさんは船とたぶんとても仲良くなった。とても感性豊かなアルファさん。
 この頃あまりカフェ・アルファを訪れなくなったタカヒロはマッキと一緒。ある日マッキを連れてミサゴさがし。アヤセと月夜のカマスたち。そしてアルファさんのカメラと時間旅行。


人ってなんか 根っこの方が 光とか音とかで うごいてんじゃねぇか って思ってんだけど
  ヨコハマ買い出し紀行(6) (アフタヌーンKC) 芦奈野ひとし [p.70]

 ちょっと哲学的で抽象的な巻。
 ガソリンも腐っちゃう下界だから?空の上のアルファ室長には嫌な感じが消えたように見える。恋敵っぽい?アルファに会いたくなさそうなマッキは素直な女の子。
 真面目にアルファ型を調べ続けるココネさん。古いレコード,人と光と音。砂浜と水着とミサゴ。トンネルを歩くアヤセ。珈琲牛乳みたいなお酒。子海石とバイクとマーク。「どこまで見られるだろう」の意味は,女子高校生だった昔と,老齢期の今とでは全く異なっているのだろう。
 おまけのページのココネさんが楽しい。ココネさんはアルファさんが大好きで大好きなのだ。「杏子さんが杏子さんが」って言ってる八千代さん@『WORKING!!』みたい。