六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

紫色のクオリア

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

量子力学の視点で平行世界を扱った物語。ラノベというよりSFと呼んだ方がしっくりくる文章と構成で,失礼を承知で例えると,ハヤカワ文庫で大原まり子でも読んでいるような,そんな感じだった。
クオリアという言葉を恥ずかしながら私は知らなかったのだが,日本語では感覚質と翻訳されるらしい。常々自分が自分たるというのはこういうことだと思ってきた誰とも共有できない感覚。それがどういうことかを扱った非常に哲学的な物語でもある。「我思う故に我あり」というデカルトの言葉を度々思い浮かべて過ごしている私には興味深いテーマだった。
アマゾンの評価が高いので気になって読んでみたが,2009年出版,そうか,『Steins;Gate』や『まどか☆マギカ』より以前にこんな物語が存在していたのか。この二作を知っていたら,読書の最中に必ずや重ね合わせて思い出すであろう。1冊で完結する非常に完成度の高い作品。