六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

城下の人

城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)

丁度10年前,約1ヶ月かかってとろとろと読んだ本。折に触れて思い出し,もう一度シリーズ通して読みたいと思い続けていた。先日,熊本城を訪れたことがきっかけで,ついに読み返すことに。
明治元年,熊本城下に生まれた著者は,幼少時代に神風連の乱西南戦争を目の当たりにし,軍人を目指して上京。歩兵の士官となって日清戦争へ趣く。凱旋後,日本の情勢を考えてロシア語を学ぶ決意をし,単身でロシア留学。歴史の波にさらされて,やがて諜報活動に従事,波瀾万丈の生涯を送る。幼少時代からロシアへ渡るまでの第1部がこの本だ。
この時代の日本人を目の当たりにし,背筋が正されるような緊張感を感じる。明治という時代を,私は負の目でしか眺めてこなかったのかもしれない。この時代の日本人が持っていた尊い精神は,今,いったいどこに残るのだろう。
焼ける熊本城を誰もが涙を流して眺める場面は,本を読むだけで耐え難い。城を誇りに感じることもあまりないまま熊本で育ったが,焼ける前の城を一目でも知っていれば,違う気持ちが宿ったのかも。熊本時代の話は,伝え聞く自分の先祖の歴史とも重なって興味が尽きないのだが,教科書で知ることの無かった明治の軍人たちの実情もまた,非常に興味深く,今度は2日で読破してしまった。

石光真清ホームページ http://www.ishimitsumakiyo.com/