六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

虐殺器官

 この小説はSFに分類されるらしい。確かに近未来を描いており現存しない技術への言及が多々見られるが、どうもSFという気がしなかった。哲学的であり倫理学的であり風刺的であり推理的であり、Science Fictionというか Social Fictionというか、小さなジャンルにとらわれない物語だった。
 とても面白かった。人間とは何なのか。言葉とは何なのか。自分が愛する者たちを守ろうとする究極な選択の一つの形がこれなのかとあっけにとられた。理解できたとは言いがたい部分が多々あり何度か読みたい気がした。ちょっとグロテスクな表現などあるので解剖学実習で気分が悪くなるような人は読まない方がいいかもしれない。

心臓や腸や腎臓がそうあるべき形に造られているというのに、心がそのコードから特権的に自由であることなどありえないのだよ

 この本とは関係ないけれど、「ジョン・ポール」といえば第264代ローマ教皇だ。2005年にヨハネ・パウロ2世が亡くなったとき、BBC Worldでさんざん「John Paul 2nd」と聞かされ、ヨハネ・パウロが英語だとジョン・ポールなのだと知って意味の無い衝撃を受けた。聖書でなじみ深いヨハネとかパウロという名前なら格調高そうに聞こえるのに、英語になったとたんにどこにでもいそうな名前(失礼)になるのかと。
 おかげで物語でジョン・ポールが出てくる度にヨハネ・パウロ2世が重なって困ったのだった。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)