六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

猫物語 [黒]

年末のテレビ放送までに読み終わりたかったのだが,毎晩ベッドに入って本を読もうとする頃には眠くて眠くて,大抵の夜は3ページも読めば意識が朦朧とし目が開かなくなってしまうため読書は遅々としてはかどらず,結局まにあわなかった。
例に漏れずほとんどが暦の実にくだらない,しかしながらテンポ良く楽しい独白で進んでいく。『化物語』に比べると難しげな単語がかなり減っていると思った。本題の猫にたどりつくまで160ページ,紙面の半分を費やして暦は月火や翼や忍と戯れる。黄金週間の話なので,まよいちゃんが出てこないのが寂しかった。
18歳にもなろう男子が中学生の妹相手に恋愛相談をし,欲求不満であるという結論に達し,その妹からお金を借りてエロ本を買いに行くとはアブノーマルにもほどがあるだろう。何と心が広い月火ちゃん? こんな兄,私だったら愛想尽かすね。そうされないのが暦の暦たる所以なのかもしれないとも思えるが。
まだ30歳程度の若者である(30歳は若者だ!強調)忍野メメが中年おっさん扱いされていることに多少ながら傷つくのであるが,まぁ高校生のとき30歳といえば雲の上ほど年上だったことは確かだから仕方がない。21歳になったとき「切り上げ30歳になってしまった!」と呆然とした記憶もあるし。まぁそれはともかく忍野には華があると思う。彼が出てくると場がなごみはしないがわくわくする。

光があれば闇があり、白があれば黒がある。

善良で公平なだけの人間なんていないということさ。むしろそうあろうとし続けるからこそ―ストレスがたまるんだ。

真面目で真摯であろうとしすぎたばかりに鬱病になってしまった友人がいた。鬱病になるほど真面目にはなれなかったが,私ももっと若い時分はもう少し真面目であろうとし今よりずっと大きなストレスを抱え込んでいたと思う。問題は解決せずとも生きていくのに支障は無いと最近では思っていて,猫にはならずに済むかもしれぬが良い傾向とも言えない気がする。

あばよ。お前は幸せに暮らせ

次はひとりで―うまくやれや。

この対になった台詞がやたらと切ない。自己陶酔と自己満足野郎の暦のくせに。

「死んじゃえ」が並ぶページは恐ろしい。「失敗した」が並んだ手紙と,どちらがより恐ろしいだろうか?