六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

あさきゆめみし

高校生の頃に第一部だけ読んでいたが,その頃はまだ完結していなかった。数年前から読もうと思って買ってあった物をようやく読了。
ほぼ全ての登場人物より年を取った今となっては,高校生の頃とは違った感性で読めることは確かなのだが,後半になるに従って(源氏の君が年をとるに従って)源氏の君の女癖の悪さには許せない気分になってしまった。もちろん今の時代の感性で抱いた感想など的外れで意味が無いが,父代わりとして引き取った姫君に言い寄るとか時代を超えて人間としてどうよ。この小説,当時のPTA(そんなもん無いと思うが)で問題にされなかったのか?!とか思いたくなった。ま実際にそんな何でも許しちゃいそうな光輝く美男子がいたら問題にならないのかもしれないが? 紫の上も明石の御方も苦しみながら立派で人間できすぎ。「これで最後」と思って可愛いドールを買ってもまた新しい子が発売されたら買ってしまう私は光源氏を非難できる立場でもないのだが。
作者及び当時の上流階級の人々の教養の深さ及び雅さには,改めてひれ伏すしかない感じ。どんな先進国だよ,1000年前だというのに。日本人,退化していないだろうかと心配になった。
源氏物語は海外でよく読まれている日本の小説の一つらしいので,英語で読んでみたい。現代の日本人にもわかりにくい古語や儀式なんかどう訳されているのか興味深い。

あさきゆめみし 美麗ケース入り 全7巻文庫セット

あさきゆめみし 美麗ケース入り 全7巻文庫セット


あさきゆめみし(1) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(1) (講談社漫画文庫)

連載が始まって初めての単行本が出た頃に読んで以来、30年以上の年月を経ての再読。当時は年増に見えた六条の御息所も今の私から見ればまだまだ若く、また当時に比べたら自分の中で日本文化への親しみや理解も深まっていて、1000年の昔にこのような文化的で優雅な暮らしがあったことに心底感嘆せずにはいられない気がした。昔はそれほど好きとは思えなかった葵の上がとても可愛らしくいじらしく思え、既に彼女の最期はわかっているが、もっと幸せになれたのにと不憫。当時はひたすら恐ろしかった六条の御息所の悲哀も胸に染みいた。


あさきゆめみし(2) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(2) (講談社漫画文庫)

夕霧の誕生と葵の上の死、紫の上との結婚、朧月夜との恋路、明石の方との出会いと姫の誕生、冷泉帝の即位、六条の御息所の死。盛りだくさんで波瀾万丈な巻。


あさきゆめみし(3) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(3) (講談社漫画文庫)

都へ戻った源氏の君は六条の御息所の娘をひきとり梅壷の女御として冷泉帝のもとへ入内させる。明石の君は京へ上り姫を紫の上に預ける。藤壺女院は亡くなり、元服の儀を終えた夕霧は花散里を母として源氏の家で暮らすことになる。この際,三条の大宮の家で将来を誓っていた雲居の雁と引き離されることに。
光源氏の周囲の女性たちの気高さが際立つ巻。しかし、夕顔の娘を偶然みつけ、父親である内大臣に引き合わせることもせず父親代わりになろうと養女にしたくせに言い寄る源氏の君にはほとほと呆れる。現代の感覚で呆れてはいけないのかもしれないが、それはさすがに人の道をはずれているだろう。冷泉帝は源氏の君が父であることを知り梅壷の女御を中宮とし、父を遇する。低い身分や雲居の雁との恋愛に苦しむ夕霧は美しい紫の上を見てしまい、思い悩む。


あさきゆめみし(4) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(4) (講談社漫画文庫)

玉蔓は嫌々ながらひげ黒の右大将と結婚するが、右大将の良さに気付き自ら決心して幸せな家庭を築く。夕霧も晴れて雲居の雁と結ばれ、子宝にに恵まれる。明石の姫君は裳着を終え、東宮のもとへ入内。入内後は紫の上の配慮で明石の御方が姫君の世話をすることになる。紫の上と明石の方はここで初めて対面をするが両者が素晴らしい人格者であることを改めて感じさせられる箇所だ。それにひきかえ六条の院光源氏は,性懲りもないことに,出家する朱雀院の三の宮を,藤壺の宮の面影を見つけられるかも知れないなどと考えて正妻に迎え,朱雀院出家後独り身となった朧月夜ともよりを戻す。苦しむ紫の上が出家を望んでも「わたしを置いていかないでくれ」と許さない。紫の上が六条の御息所の死霊にとりつかれて光源氏が留守にしている間に三の宮は柏木に寝取られ柏木の子を孕むが,光源氏などに柏木を罰する資格があるとは思えない。どうするか?


あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

六条の院の正妻に不義の子を孕ませたことで柏木は苦しみ、夕霧に六条の院への取りなしと、北の方である二の宮のことを頼んで息を引き取る。夕霧は気の毒に思った二の宮を見舞ううちに恋してしまい、雲居の雁と険悪に。三の宮は男児を出産するが夫に愛されていないことをようやく自覚し出家。不義の子である薫は六条の院の子として育つ。紫の上が亡くなると六条の院はようやく彼女を傷つけたこと、彼女を愛していたことに気付き、嘆きの内に一年を送り、その後出家。ある日、明石の御方は六条の院がこもる山に不思議な雲を見て院が亡くなったことを知る。第1部の終わり。


あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫)

紫の上から二条院を譲り受けた、明石の中宮の三の宮、匂の宮と、一般には光源氏の晩年の子として認められている、光源氏正妻の朱雀帝女三の宮と柏木の不義の子である薫の中将の物語。薫は自分の出生に疑問を持ったことをきっかけに思い悩んでおり堅物と言ってもよいほどの真面目な若者、匂の宮は光源氏と紫の上との関係に憧れてただ一人の人を捜す色恋の噂多い若者。二人が二人、隠遁生活をする朱雀帝の八の宮の娘に恋してしまう。かつての光源氏と頭の中将と同じくらい、いやそれ以上に薫と匂の宮は個性的で魅力的な若者に描かれていた。


あさきゆめみし(7) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(7) (講談社漫画文庫)

匂の宮と結婚した中の君の諸子の妹,浮舟をめぐる物語。薫の大将は大君によく似た浮舟を世話し迎えようとするが,匂の宮は激情で浮舟を我がものにしようとする。浮舟は姉である中の君と,暖かく世話をしてくれた薫の大将を裏切ったことで苦しみ悟りをひらいてゆく。匂の宮はさすが光源氏の孫というか,女癖の悪さがそっくりだ。誠実で優しい薫がどうしても救われず残念に思うのだが,これが世の中というものだろう。どんな努力もどんな誠実も報われないときは残酷なほどにきっぱりと報われないのだ。