六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

風の歌を聴け

 何度か読んでいるのでこのダイアリーにも過去の記録が残っていないかと思ったら2011年に読んだらしい。

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 というわけで,この本を読むのは1979年の夏以来数度目だ。『群像』掲載が1979年6月号で8月に第二刷を買っているから私はかなり初期からの読者である。
 海辺の街,ビールの底に沈んだような二十一歳の夏,脈略があるのかないのか分からないテンポの良い会話,私とは縁のなさそうな生活をする人々。読み終わって残るのは,滞りなく日々老いていく自分を過ぎゆく風の気配。

あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕たちはそんな風にして生きている。

 この箇所が,1979年も今も私にとってこの本の象徴で,時の流れの中へ消え去って二度と会えなかった4本指の女の子が,私にとってこの本の向こうに感じた風の気配。二度と戻れない場所や二度と会えない誰かのことを忘れられなくて苦しいときにこの本を読み返すのかも知れない。
 

風の歌を聴け

風の歌を聴け

風の歌を聴け (1979年)

風の歌を聴け (1979年)