六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

旅のラゴス

筒井康隆はそれなりにたくさん読んだし素晴らしいSF作家だとは思っているけれど,実は好きな作品は『七瀬ふたたび』くらいで,あとは相容れない気持ちが残ることが多かった。けれど,新潮文庫の商品説明(カバー後ろの作品紹介)を読んで,この本には突然強烈に興味を感じたのだった。読み始めてすぐに思ったのは,何と今までの筒井康隆の印象とは異なる作品だろうかということ。文体も主人公も何もかも。SFを読んでいるというよりも,単に見知らぬ世界の物語を聞いているかのようでもあり(旅の途中での様々な街での体験などには,ちょっと『狼と香辛料』を思い出した),人生や文明を論理的に哲学的に語り,奇想天外な筒井康隆的SF要素も確実に散りばめられ,時を経て何度か読み返せばそのたびに違う物を見いだせそうな本だと思う。人生は心が求める誰かに出会うための旅なのだろうか。たとえ老齢であと幾許の余命になったとしても。こういう作品を書く筒井康隆という作家はやっぱり本当に凄い人なのだなと改めて。

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)