読み終わった瞬間,何がどうしてか分からないがやたらと悲しかった。あとがきで訳者が引用していたジュディス・メリルの書評が言うところの,この気持ちだろうか。
そして、かなり自信を持っていえるのは、このハッピー・エンドがあなたを泣かせるだろうということだ。
たとえわずかであっても命を持っている電気動物,自分を生きていないと言いつつも自らの人間らしい苦しみを晴らすために生きている本物の動物を殺すという非人間的行動をする彼女,「それ」と呼ぶ機械を破壊して心痛に蝕まれていく彼,ムード・オルガンの虜のように見えたのに誰よりも彼のことを思いやっていた彼女。
人間が心の中に相反して存在させている人間性と非人間性の物語だった。それが持つ切なさが悲しさの正体だったのかもしれない。
『ブレードランナー』を見たのは随分昔,どんな内容だったかすっかり忘れてしまったがもう一度見てみたい。そして『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は何度でも読み直してみたい作品だと思う。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03/01
- メディア: 文庫
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たぶん,アンドロイドが電気羊の夢を見ることもあるだろう。