六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

本の記録(2021-09)

 10月から読書の時間がとりにくくなるので,その前に読み終えておきたかった本をできるだけ頑張って読んだ。

9月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:1765
ナイス数:25

謎解き 聖書物語 (ちくまプリマー新書)謎解き 聖書物語 (ちくまプリマー新書)感想
 ちくまプリマー文庫なので聖書の知識がなくても分かるように書かれているせいか,全体的に冗長。だが西アジアの古代史と各地に点在する伝承と有名な旧約聖書の逸話を関連付けて考察する内容は興味深かった。
 聖書の文章をよく知る私は聖書からの引用を読んで「あれ?」と思ったが,然り,全て著者が自分で翻訳した文章だった。著者はオリエント史・旧約学・西アジア考古学が専門で,歴史・神学どちらの視点も持ち合わせているため,キリスト教には縁がなくても世界史的に聖書に興味を持てる内容になっていると思う。
読了日:09月03日 著者:長谷川修一
かげきしょうじょ!! 2 (花とゆめコミックススペシャル)かげきしょうじょ!! 2 (花とゆめコミックススペシャル)感想
 夏休み,東京へ向かう新幹線の中から。やっぱりアニメとは少し違っている。その後,さらさの実家で愛とさらさの彼氏,白川暁也が出会い,幼少のさらさと歌舞伎の白川家の関係が語られる。さらさは白川家と何か関係がありそうだということは分かるが,詳しくわからないのはアニメと同じ。煌三郎の「私はねつくづく歌鷗さんの血筋に弱いらしい」というセリフが意味深。愛とさらさは一緒に歌舞伎を見に行ったりして楽しく夏を過ごすが,愛がさらさと彼氏に気を遣いながら不思議に思うのもアニメと同じ。
読了日:09月06日 著者:斉木久美子
かげきしょうじょ!! シーズンゼロ 上巻 (花とゆめコミックススペシャル)かげきしょうじょ!! シーズンゼロ 上巻 (花とゆめコミックススペシャル)感想
 『MELODY』(白泉社)に移籍する前,『ジャンプ改』(集英社)にて連載していたものを再編集したのが『かげきしょうじょ!! シーズンゼロ』で,こちらを読んでから再編集した『かげきしょうじょ!!』を読むと良いようだ。
 アニメの第1話からの内容がこれになる。奈良っちのファンが学校の近くに現れる直前,さらさと愛が「友達じゃない!」と言い争うまで。内容を知っていても面白くて引き込まれ読み進んでしまう。
読了日:09月06日 著者:斉木久美子
あのころの風景 リリカル少女マンガ傑作選あのころの風景 リリカル少女マンガ傑作選感想
 『りぼん』1975年~1981年の4作品。『あのころの風景』は社会人女性が大学時代の恋愛を回想する物語。『聖夜・粉雪ふりしきる』『聖・グリーンサラダ』はクリスマスの日のある女子高校生の物語。『マルメロ・ジャムをひとすくい』は外国を舞台に内気で大人しい女子大生?の恋を描く。
 リアルタイムで読んだ頃,マルメロのジャムに憧れたことをよく覚えている。単なる葉っぱのサラダも「グリーンサラダ」と呼べばお洒落になるし,田渕由美子さんの表題のセンスは素晴らしいと思う。どの作品も,今読んでも心に染み入る素敵な物語だ。
読了日:09月08日 著者:田渕 由美子
地名の楽しみ (ちくまプリマー新書)地名の楽しみ (ちくまプリマー新書)感想
 日本土地家屋調査士会連合会の機関誌『土地家屋調査士』に連載した内容を加筆修正された本。
 例えば河岸段丘は「ハケ」「ママ」と呼ばれた。「タ」は「○○のある所」の意,「ハバ」は段差。このような古来からの呼び方を地形の成り立ちと共に解説,その後,漢字の伝来と共に漢字があてられ,場合によってはぴったり表せる「国字」が作られ定着したことが説明される。
 馴染みのない地名や言葉が多く取っつきにくい部分もあるかもしれないが,本書により今まで注意を払ったことがなかった地名や住所表示に意味を見いだす機会が増えたと思う。
読了日:09月08日 著者:今尾恵介
「空気」の研究 (文春文庫)「空気」の研究 (文春文庫)感想
 本書は日本人が意識せずにまとっている「空気」について,多くの事例を挙げて考察し正体を暴く希少な哲学の書。「空気」というのは,「あの時の空気ではとてもそのようなことは言えなかった」などと言う時の「空気」である。決定権を持っているのは空気である故,誰も反論できないし責任もとれない。空気の支配から逃れる方法はあるのか? 難解ではあるが,空気というものに興味や疑問を感じている者なら読む価値がある本だと思う。
読了日:09月19日 著者:山本 七平
「わかる」とはどういうことか ――認識の脳科学 (ちくま新書)「わかる」とはどういうことか ――認識の脳科学 (ちくま新書)感想
 「わかる」とはどいういったことかを色々な角度から考えてみる本。科学とエッセイの狭間みたいな内容だったと思う。「わかる」ためには自分中に比較対象のデータをもっていなければならず,対象をそれらと比較し自分の言葉でそれを置き換え説明できるようになったとき「わかった」と言えるということのようだ。わかっていなければ,ぼんやりとした説明しかできない。
「自分の操作出来る心像に置き換えるとは、新しく取り込んだ情報を既知の情報に置き換えることです。あるいは自分の言葉、自分の思考単位に置き換えることです。」
読了日:09月27日 著者:山鳥重
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)感想
 医療デバイスが埋め込まれ病気が克服された世界。一見,この物語は自分の現在とかけ離れた絵空事に思える。が,決してそうではない。現代の日常にはレコメンドが満ちあふれている。Netflixでお勧めだけ見ていれば時間はどれだけだって潰せるだろう。Amazonで買い物をすれば次々とレコメンドが表示され,今まで知りもしなかった製品が突然欲しくなる。時に面倒で煩わしい決断というステップを排除し,レコメンドに従っているだけの生活になったとして,それは不幸だろうか? SFというより哲学の書だった。
読了日:09月29日 著者:伊藤 計劃

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