六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

鋼鉄都市・はだかの太陽

鋼鉄都市

鋼鉄都市

 続編『はだかの太陽』を読む前に,内容を思い出しておきたくて読み返した。
 以前読んだときの記憶は「面白かった」しか残っていない状態だったが,このSFミステリーは二度目も最後まで楽しめた。
 この物語が名作であり,アシモフが類い希な大SF作家である事実は揺るぎないが,ただそれでも,今となっては1953年に発表されたこの物語には,世界観の端々に古くささを感じざるを得ない。それは『ファウンデーション』シリーズでも感じたことだった。ネットやパソコンが当たり前になった時代を生きる私たちとアシモフの時代とでは,既に世界を見る感性が異なっているのではないかと思ってしまう。登場人物の女性(この物語ではイライジャ・ベイリの妻ジェシィ)が実に男性視点で古くから思われがちのステレオタイプで魅力に欠けることも,古くささを感じる一因のように思える。
 ただ,この古くささをもってしても非常に面白いのは,アシモフの物語には人間というものの真実が追求されているからではないかと思った。
 ロボットを毛嫌いしていたイライジャが,その実際的な思考によりダニールを受け入れていく様,度々の葛藤や怒りなどは非常に興味深く,淡々と論理的に語るダニールもまた非常に魅力的だ。ダニールがパートナーとしてそこにいて様々な助言をしてくれるならどんなに有益だろうか。
 この作品は,やはり一度は読んでおくべき古典SFなのだろうと思う。
 

 『鋼鉄都市』の続編。イライジャ・ベイリは殺人事件の捜査のため,高度なロボット社会である惑星ソラリアへ赴き,オーロラから派遣されたかつてのパートナー,R・ダニール・オリヴォーと共に事件の解決に尽力する。
 1957年刊行ということで,例えば飛行機の中で自動的に流れ出るニューステープで読むなど,各々がスマホ濃厚のバーチャル世界で生きている現代からすれば酷く陳腐なのだが,そんなこともそのうち気にならなくなってしまうほど物語に引き込まれ,結局は面白く読み終えた。さすがアシモフ
 ソラリア人は地面を歩いて外界の空気を吸ったり,太陽を直接見たりすることができるが,他の人と直接会うということができない。地球と真逆の発展を遂げたソラリアで,ベイリは見知らぬ習慣と一つ一つ向き合って考察していく。舞台が宇宙なのでSFのイメージだが,未知の世界を舞台にした推理小説という方がピッタリくる気がする。しかし「科学」に人間というものへの考察が含まれているのなら,これは今の時代にあってもとても質の高いSFと言えるのではないかと思った。
 人間という種が内包するあらゆる可能性を吟味し,危険性と同時に明るい可能性を示し,希望を持って終わっている。できれば続編の『夜明けのロボット』を読みたいのだが,日本語訳版はKindle化されていないようだ。紙の本は買えない。早期のKindle化を><!