20年前の1998年夏,まだテレビが四角かった時代の作品。
「人はみんなつながっている」と言われ,「ナビ」と呼ばれる汎用情報マシン(コンピュータ)を使った人々は,ワイヤードと呼ばれるネットの中で繋がる。それを象徴するかのように立ち並ぶ電柱と電線の風景が繰り返し出てくる。風を切り電線が鳴る音とハシブトガラスの群れが印象を強くし想像を引き立てる。「人と人が繋がれば微かな声も大きくなり,命だって長くなる。」と。
レイン,岩倉玲音という14歳の少女は,リアルとワイヤードで異なる人格を持つが,だんだんその境目が曖昧になっていく。彼女は肉体を持った実行プログラム。
これが20年前に作られていたというのが本当に凄い。1998年といえば,私がwwwの海へ漕ぎ出して,htmlを手書きしてホームページを作り始めた年だ。多くの人はネットへ未接続で,パソコンとモデムを持ち歩いてISDN公衆電話でネットへ繋ぐ私はPCオタクだった。だが,そんな20年前だったからこういう作品が自由に作られたのかもしれないとも思う。こんなにも地味で萌え要素もなくグロくて暗くてハードで限りなく人を選びそうなアニメは,今の時代だったら放映に至れるだろうか。
リアルがネットに浸食されているのは今の社会の状況そのままだ。なかったことがあったことにされ,現実がネットに書き換えられていくのが今。架空のエージェントが肉体を持って活動し誰もそれを見抜けないのが今だ。
「きおくにないことはなかったこと きおくなんてたんなるきろく きろくなんてかきかえてしまえばよい」正しくもあり間違ってもいる。
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