六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

タイタンの妖女

 22世紀の物語だが,1959年出版のSFなので違う世界の22世紀感が半端なかった。異なる惑星まで行く技術を持ちながらテープレコーダーで音楽を聴くとか,銃を持って戦争するとか。また,タイタンで人間が普通に呼吸でき,鳥のような生物が存在するというのも,タイタンの大気組成が明らかな現代の知識を持って読むとやはりどこか違う世界の地球や太陽系の物語と思えた。タイタンの大気は窒素98.4%・メタン1.4%で,人間の生息には全くもって適さない。
 SFとしては人類の発展や宇宙に住む他の生命との接触,宇宙で起こる物理現象,また人間そのものの生涯にも重きが置かれ,斬新な発想で読んだことのないタイプの興味深い内容だったと思う。
 なお,表題からC.L.ムーアの『大宇宙の魔女』みたいな妖艶な美女が出てくることを期待して読んだらタイトル詐欺と思うだろう。

タイタンの妖女

タイタンの妖女