六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

消えたイングランド王国 (集英社新書)

 『ヴィンランド・サガ』の時代を扱った本ということで,モリーさん(id:Moriyamaさん)に教えていただいたので読んでみた。
 
 イングランドが統一される以前の七王国時代,大ブリテン島南部に領土を持っていたウェセックス王国のアルフレッド大王がまず統一の礎を築き,大王の息子エドワード長兄王が進入してくるデーン人との戦いを制し,大王の孫アゼルスタンが初めてイングランド国王を名乗ったのが924年。
 それから,ウィリアム征服王が即位しノルマン朝が始まる1066年まで,142年間続いたイングランド王国の激動を,時の王や有力者,戦闘などを交えて物語風にわかりやすく解説した本。歴史の登場人物達の言動を単に並べるだけではなく,しっかりキャラ付けして各々の人物に興味を抱けるような書き方をしてあるので,非常に読みやすく,内容が頭に入りやすかった。戦闘の場面など物語を読んでいるようにドキドキワクワクで,歴史は(そして人の一生も)ちょっとした偶然や運が重なって固まって動いてきたのだなぁと当然のことだけど感慨深く思ったり。学校の歴史の授業は何であんなにつまらなかったのだろう。この時代のイングランドの歴史なんて,アルフレッド大王が出てきてヴァイキングが侵攻してきて,ウィリアム1世が即位してサラッと終わりじゃないか?
 
 英国は3回訪れて史跡などを見て回ったのである程度の歴史は旅行前後に勉強したのだが,主に必要となる英国王家の知識はノルマン朝成立以降のものであることが多く,知識の網から抜け落ちていた時代のパズルが少しばかり埋まった気がする。もう2〜3回読んでもいいかもと思う。
 『ヴィンランド・サガ』に出てきた登場人物の中ではエゼルレッド王,デーン朝のスヴェン王にクヌート王,「のっぽのトルケル」=「長身者ソーケル」などが登場し,実際の歴史の中で彼らがどのような役割を背負った人物だったのかが垣間見られよかった。