六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

大砲とスタンプ (1) 〜 (5)

 この本も読みたいと思って最初に探したときは紙の本しかなくて,Kindle版が出ていることに最近気づいて嬉々としてまとめ買い。すごく面白かった。戦争だし簡単に人が死んだりするのだけどね。兎にも角にも戦闘ではない軍の生活を詳細に描く希有なコミックだと思う。Kindle版5巻は昨日出たばかり。
 
 士官学校を卒業し初めての任地へ赴く,兵站軍のマルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉は,小さくて大きな丸めがねをかけたショートヘアの女性。
 輸送や補給が任務の兵站軍は「紙の兵隊」などと嘲笑われているが,マルチナはお仕事大好き書類大好き。兵站の仕事は有能っぽいが,安全装置を外さず銃を使おうとしたり,軍人としてどうよ?という側面も。基地での現実を知らない新米少尉としてバカにされたりしながらもやる気と気合いと正義感で仕事に突進する。彼女になついて周りをチョロチョロ動くイタチモドキのスタンプは,何だかちょっと魔法少女に付属する小動物みたい?
 彼女を中心に軍の内情が色々と描かれているが,独特の軍用メカの解説など機知に富んでいてマニアックだし,事件なんかも現実的というか人間味溢れる感じ。登場人物は一々個性的で面白い。上官のキリール・K・キリュシキン大尉はSF小説を書くのが趣味で,つまらない会議の退屈な時間を小説の推敲で楽しんでいたりする。

 
 
 マルチナは中尉に昇進。キリールの弟コースチャが配属される。面倒だけど可愛い弟だ。コースチャは武勲を立てたがっているが空回りばかりでマルチナを姉のように??慕う。
 海軍の野蛮連隊に届けた物資のせいで一波乱。底知れぬ感じの陸軍中尉スィナン・カライブラヒム。マルチナはイイダコ高地で戦闘に巻き込まれ唯一の将校として指揮をとることになるが,寒さにやられ入院。戦争中らしく,なかなか波瀾万丈な日常?の巻。 
 
 百戦錬磨なボイコの奥さんはたおやかな美人。キリールとマルチナがもらった十字勲章がとても羨ましそうなコースチャ君が超かわいい。どことなく胡散臭い憲兵中尉のスィナンがマルチナに接近し,キリール心配。
 共和国軍の補給基地アカベコ争奪作戦。ヘリから投げ出されるのは>< コースチャは先陣切って頑張るが勲章は…。そして麻薬騒動。調査するマルチナにいわくありげなスィナン。
 逞しいアーネチカの過去。それにしてもキリールは役に立たないねぇ(と言いつつキリール大好き)。
 ルーチンを圧迫する新年の帰省。でも書類が(やっぱりキリールだめじゃん?)。↓これはちょっと共感してしまった。

おのれルーチンを 圧迫する 年中行事め〜
新年なんて 来なきゃ いいのに!

 どうにか帰省したマルチナの実家は居酒屋。家ではマーリャと呼ばれている。飲みに来た警察にマルチナは因縁をつけられ…。軍と警察の関係はどこの世界でも微妙なのだろう。

 
 
 キリール VS スィナン業務対決。存分に仕事をするマルチナの恐ろしさが面白かった。いや書類フェチでしょう!
 計算機こわれる。キリールさんのSFは実は国際的に人気だった? あらゆる場所で胡散臭く行動するスィナンさん。アリ・パシャ将軍は何だったのだ。
 大公国と帝国の合同上級者作戦会議で初めて帝国へ行くマルチナとお供のアーネチカ。ラドワンスカ大佐は,実はガブリエラお嬢様だった。帝国によくいる鳥ニセネココウは,幸運を呼ぶ鳥と呼ばれていて大活躍。命令書のカバン事件。アーネチカが一々逞しくてマルチナと反対方面で有能だ。
 「中尉時代が夢なんて後からほのぼの思うもの」なんてパロディは最近の若い人には通用しないのでは(^^;? 軍隊の靴は重要である。
 クリム・M・キリュシキン元帥閣下,保養地ユキンコへ。何故が護衛にはいつもの胡散臭い憲兵中尉。 
 
 ちょっと都合が悪いとさっさと人を殺してしまうスィナンやっぱりかなり怖い。スィナンのいるところに陰謀ありって感じだ。でもユースフのことは本気で可愛がっているっぽい? 「兵站軍は不公平を許しません!」でマルチナも本気で気に入られたっぽい? 気に入られても殺しそうだから心配。マルチナは持ち前の書類フェチを活かしてキリュキシン元帥を救う。紙は大切なのである。でも相変わらず武器を取って闘うことだけはダメダメすぎて,どこぞのヤン・ウェンリーを思い出させる。
 日記が大切な眼鏡の補充兵ディーマとアーネチカ。この話にしても,国債割り当てノルマでマルチナが二日酔い街へ訪ねて行った時にしても,アーネチカの色々な意味での逞しさはある種憧れる。「ウンコな今日は雌犬に…」いや言うどころか私とても書けないですわ(^^; 私の立ち位置はアーネチカのほぼ対局なマルチナなので,こういう女性が横についていてくれたら凄く安心できる気が。
 アゲゾコスペシャ醸造所探し。遺跡のようなアゲゾコ要塞には謎が空間がいっぱいなのだった。中立国を作っちゃうキリールさん,さすが想像の世界で生きている人。デュラン少佐はどうしたの?
 ルールーちゃんの赤紙ラジオではどこぞのリリー・マルレーンのことなどをちょっと思い出した。電波は自然に飛んでいってくれるからやっぱり戦場では武器になるんだろうな。最後にまたスィナンの影。