六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

陽炎、抜錨します 2〜5

 作戦行動のため不知火が一時的に横鎮へ来ることになる。陽炎のはしゃぎぶりは正直言ってうざいレベルで私が皐月だったら「いい加減にしてよ」と怒鳴りつけたくなる(のは我慢するけど不機嫌になる)ところだが(皐月いい奴だ)、これだけ見事に包み隠さず心のままにはしゃぐのは、現在の自分の艦隊の艦娘たちを心から信頼している証なのだろう。結果的に上手くいったけれど(王道ストーリーだし)、この巻の陽炎の行動は読んでいて私は疲れた。私はこういうの好きじゃないけど、でも駆逐艦娘にはこの精神が必要なのかもね、と思いつつ読んだ巻だった。

 
 
 佐世保と呉が総力を決して南方の海で戦う中、陽炎たちはそちらへ赴くわけでもなく、何故かリンガ泊地へ赴任を命じられ、提督と愛宕に見送られ出発する。リンガにいたのは老提督と彼の古くからの秘書艦である叢雲、あきつ丸。叢雲も提督もバカンスを楽しむようにと言うだけでらちがあかない。
 この物語も3巻目だが、今までで一番良かった。…と思う。リンガ泊地が場所柄担っていた役割に想いを馳せ、駆逐艦という艦種の役割に想いを馳せ、また吹雪型の叢雲が如何に初期から活躍していた船であるかに想いを馳せ、説得力があった。もし艦これをプレイしていなければ、私はこれらの機微を少しも理解できなかったと思うけれど。
 他登場艦は、熊野・鈴谷・三隈・明石・鳳翔・不知火。叢雲の未来に幸あれ。 
 
 陽炎と霰が呉鎮守府の第十八駆逐隊に所属していた頃に行われた鎮守府祭にまつわる物語。佐世保にいた長月と皐月、横須賀にいた潮と曙も鎮守府祭に参加しており、将来に繋がる糸がこの頃から既に伸び始めていたことが窺える。
 今まで名前だけ出ていた霞や黒潮、最上の活躍の機会があり、呉に所属している祥鳳や龍驤・大淀・神通・敷波・伊勢・日向・鬼怒・阿賀野・球磨、横須賀の漣・朧・那珂、佐世保の文月に川内など、お祭りらしく登場艦娘も多く、この子はここに所属していたんだ、などと思いながら読むのは楽しかった。 
 
 ゲームマップで言うところの「3-2」の物語。キス島沖の敵を撃滅するため、第十四駆逐隊は北方の幌筵泊地へ。北限の停泊地には提督と阿武隈、木曾、まるゆが赴任しており、呉から伊勢&日向が来ていた。阿武隈と木曾、まるゆのイメージはゲームそのまま違和感なし。キス島はゲーム通り駆逐艦のみの艦隊でなければ羅針盤で北へそれてしまう。毎回そうだが、駆逐艦魂の見せ場満載。3-2突破の大変さは艦これの数あるマップの中でも屈指なので当然だが、陽炎たちは大打撃を被り、第十四駆逐隊のメンバーと縁ある駆逐艦たちが多数駆けつけ賑やか。
 著者後書きによると、物語はあと2巻で終わるようだ。だらだら続かないところにも好感が持てる。 
 
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