11世紀スコットランドを舞台にした武将マクベスの栄光と没落の話。魔女の予言を聞いたマクベスは,野心の虜となって自ずから人生の奈落へ突き進んでゆく。悪を為した者の心の暗闇が戯曲形式で描かれる。
文学や戯曲に疎い私にとってありがたいことに,本書には本編のあとに「『マクベス』を読む」という翻訳者である木下順二氏による長い解説が載っている。おかげで物語を読んでいるだけでは「よくある話ね」で終わってしまいそうだったところ,文中の比喩やシェイクスピアによる表現の考察などを知ることができた。戯曲として耳から入るべき言葉を文字で追っていくというのがどのようなことであるかも考える機会になった。シェイクスピアがどう素晴らしいのか多少なりとも垣間見られたと思う。センスの無い私には本当に多少垣間見られた程度なのだが。
また,シェイクスピアがどのような時代の人であったかとか,その時代の英語は今の英文法で読めるのだということも改めて知る機会になったと思う。
シェイクスピアは1564年,ガリレオと同じ年に生まれ,1616年,セルバンテスや徳川家康と同じ年に死んでいる。丁度人生の中程,シェイクスピア39歳の年である1603年は,江戸幕府が開かれた年,そしてエリザベス1世崩御の年だった。52歳で世を去っているが,生まれた日も死んだ日も4月23日とのこと。
- 作者: シェイクスピア,SHAKESPEARE,木下順二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/09/16
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11世紀スコットランドの勇敢な武将マクベスは,魔女の暗示にかかり王ダンカンを殺し,悪夢の世界へ引きずり込まれてゆく。シェイクスピア(1564 - 1616)は,1600年に36歳で『ハムレット』を書いた後,40歳で『オセロー』,41歳で『リア王』,42歳で『マクベス』と,立て続けに四大悲劇を書いた。作者最盛期の作品である。