理科系の書物というものは往々にして時が経てば淘汰される運命にあるため，今になってググってみても何の情報も出てこない。そう，数年に一度はWebで探し回っているけれど終ぞ情報を得られたためしがない。訳本だった，上下巻に分かれていたということはよく憶えている『あなたの生物学』という本。1980年代初頭に高校の図書館から借りて読んだ。当時の図書カードを見ても書いてあるのは書名だけで，著者や出版社はわからない。*1
高校3年生の時，ある職業を目指すために文系クラスを選んだものの，そもそも文系な人ではないため居心地悪いことこの上なく，将来の目標とは裏腹に毎日毎日生物学ばかり勉強し，模擬試験で理科系クラスの人を抑えて生物学で1番を取ることに執念を燃やすばかな毎日を送っていて，ほとほと行き詰まっていた。そんな時に読んだのがこの本で，本当に楽しくて楽しくて，もう無理して文系に進むのは止めようと心から思った。高校3年生の12月になって，担任教師に「理系に転向します」と申し出たけれど，私の生物学バカは教師の間でも知られていたようで，何も言われずに受け入れられた。
この本を読まなかったら無理して文系へ進み，きっと違う人生が待っていたことだろう。どちらが良かったのか分からないけれど，とにかくこの本は私の人生を変えたのだった。もう一度お目にかかりたいと思うけれど，今や叶う希望はなさそうだ。
