六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

青い城

29歳のヴァランシー。この物語の社会においては,彼女は自分の力で男をつかまえることもできないオールドミス。母の言いなりになって決まり切ったつまらない日々を送り,青ざめて痩せていて,美人の従姉妹の引き立て役。彼女がどんな人間であるかどんな想いを秘めて暮らしているか,知る人はない。
余命一年の宣告を受け,人のために生きるのを止めて自分のために生きることにした彼女の大胆な言動は,実に爽快だった。心の中に抱き続けた「青い城」を得た彼女は,同じくモンゴメリの『丘の家のジェーン』で,プリンス・エドワード島で暮らし始めたジェーンと重なった。この2つの物語はよく似ていると思う。その人なりの個性を十分に発揮できる最高の環境をもったとき,人がどれほど生き生きと才覚を現すか。そんな人生のいとおしさを,ヒロインを通して体験できる物語。
モンゴメリが書いた唯一のプリンス・エドワード島以外を舞台にした物語ということだが,冴えた自然描写はあいかわらず素晴らしかった。

青い城 (角川文庫)

青い城 (角川文庫)