六月の雪

緋色は雪の涙なり

Learn as if you will live forever, Live as if you will die tomorrow.
 
 
  

東京効果

 熊本で九年間,ひっそりと生きてきた。
 熊本は生まれ育った街,大好きな街。だけど,私にとってはたぶん,過去の街。
 知り合いもいないから,たまに両親に会うだけで,いつも静か。いつも一人。
 私は一人が嫌いじゃない,むしろ好き。だから,それはそれで居心地が良かった。
 誰にも邪魔されず,自分のペースで生活できる。

 同じ私なのに,東京へきたとたん,そうもいかなくなった。
 過去から戻ってきた感じ。ここには知り合いがいっぱいいる。
 住んでいない人も何かの用事でやってくる。
 別にぜんぜん望んではいなかったのに,何故か人と会う機会が増える。
 出かける機会が増えていく。

 それも悪くない。
 一人が好きだけど,人と会うのも嫌いじゃない。むしろ好き。
 最近すごく嬉しかったこと。
 24年間どこで何しているかも知らなかった大学時代の同級生から電話があって
 再び繋がる機会が持てたこと。

 大学では同じ研究室だったのに,あまり話す機会もなかった彼女。
 卒業後はまた別の大学へ行ったことだけ知っていた。
 年賀状のやりとりすらなかったから,二度と会うこともないのだろうと思っていた。
 でも,24年振りに話した電話はとても嬉しくて楽しくて,不思議だった。
 彼女の24年間を聞きたいな。会える日がいまとても楽しみだ。